OEM の裏側。 色調整・品質テスト・研究工程で、実際に行われていること
OEM と聞くと、
「工場で大量に作って、ラベルを貼るだけ」
そんなイメージを持たれることが少なくありません。
でも、実際の OEM 現場はもっと静かで、もっと地道で、
“細かすぎるくらいの調整” の連続です。
今日は、あまり表に出ることのない
色調整・品質テスト・研究工程 の裏側について、
できるだけ正直にお話ししたいと思います。
1. 色づくりは「感覚」と「数値」のあいだ
ネイルジェルの色調整は、
単に「赤を足す」「白を引く」といった作業ではありません。
同じ色でも、
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光の角度
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照明の種類
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肌のトーン
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ベースカラー
によって、見え方がまったく変わります。
研究室では、
0.1g 単位で顔料を調整しながら、
数パターンのサンプルを同時に作ります。
その中から
「写真では良いけれど、実物だと沈む」
「一度塗りは綺麗だけど、二度塗りで重くなる」
といった細かい違いを、ひとつずつ消していきます。
ここで重要なのは、
ネイリストの“感覚的な言葉”を、研究側がどう理解するか。
「もう少し柔らかい感じ」
「くすみすぎないベージュ」
こうした曖昧な表現を、処方に落とし込むのが OEM の仕事です。
2. マグネットジェルは特に難しい
マグネットジェルは、OEM の中でも難易度が高い製品です。
理由はシンプルで、
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粒子の大きさ
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粒子の比重
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分散の安定性
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ベースジェルの粘度
これらのバランスが少し崩れるだけで、
光の動きが変わってしまうから。
研究工程では、
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粒子が沈まないか
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時間が経っても同じ動きをするか
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マグネットの反応が均一か
を何度も確認します。
「最初は綺麗だったのに、数週間後に動きが悪くなる」
この問題を防ぐため、
実際にはかなり厳しいテストが行われています。
3. 品質テストは「壊すため」に行う
品質テストというと、
完成品を大切に扱うイメージがあるかもしれません。
でも実際は逆で、
「あえて過酷な環境に置く」 のが品質テスト。
例えば:
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高温環境に数日置く
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低温環境から急に室温へ戻す
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何度も撹拌・静置を繰り返す
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実際のサロンワークで連続使用する
こうしたテストを通して、
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分離しないか
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粘度が変わらないか
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発色が落ちないか
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臭いが変わらないか
をチェックします。
テストで問題が出る製品は、必ずどこかで問題を起こします。
だからこそ、ここは妥協できない工程です。
4. 成分調整は「安全」と「使いやすさ」のバランス
最近よく相談されるのが、
HEMA フリー、TPO フリーといった成分指定。
ただ、安全性を高めるほど、
テクスチャーや密着感が変わる のも事実です。
研究工程では、
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どこまで成分を置き換えられるか
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代替原料で同じ操作性が出るか
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硬化速度に影響がないか
を何度も検証します。
「まったく同じ使用感」にするのは正直難しい。
でも、
“できるだけ近づける” ための調整は何度でも行います。
ここは OEM の技術力が最も問われる部分です。
5. サンプルが何度も作り直される理由
ネイリストさんから
「何回もサンプルを作り直しても大丈夫ですか?」
と聞かれることがあります。
答えは、
むしろ作り直す方が普通 です。
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色
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粘度
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粒子感
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硬化後の仕上がり
これらは、
一度のサンプルでは決まりません。
OEM は
“一緒に正解を探す作業”。
その過程を大切にするブランドほど、
完成したときの満足度が高く、長く続きます。
6. 研究工程で一番大切にしていること
設備や技術ももちろん大切ですが、
研究工程で一番大事なのは
「話をきちんと聞くこと」 だと思っています。
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なぜその色が好きなのか
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どんなお客様に使いたいのか
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サロンワークで何に困っているのか
これを理解せずに作ったジェルは、
どんなに数値が綺麗でも、
“使いやすい” とは言えません。
OEM は製造業でありながら、
とても人間的な仕事 です。
おわりに
ネイルジェルが一本完成するまでには、
たくさんの試作と、失敗と、修正があります。
そのすべてが、
ネイリストの手元で安心して使える一本 につながっています。
もしあなたが OEM でブランドを作ろうとしているなら、
「どんな工程を経て作られているか」
を知ることで、
ブランドへの向き合い方もきっと変わるはずです。
見えない部分にこそ、
ブランドの本当の価値は宿ります。